ある日のこと。
 大学からの帰り、普段が良いのコンビニが改装工事を始めてしまっていた為、いつもとは違う道を通って帰っていた。
 そう言えば、父の言っていた母らの住所はこの辺りにあったはずだが――と思っていた刹那。

 ガチャ。

 不意に開いたある家の扉。
 そこから、すらっと高身長で髪の長い女性、そしてその母と思しき二人が出て来たのだ。
 図らずも目をやってしまったその姿に、僕の心臓は破裂しそうな程に鼓動が強くなった。
 綺麗だなとか、運命だとか、そんなことを思ったわけではない。
 かといって、不思議と母に姉だと確信がいったが、それにドキリとしたわけでもない。
 
 ただ何となく――そう。何となく、目が離せなくなったのだ。

 姉の顔はとても父と似ていて、母は僕と似ている。
 他に似ている誰を並べても分かる程に、僕らが親子、そして姉弟なのだと思ってしまった。

「今日はそれほど長くは――」

 母と目が合うと、話していた言葉が中断されてしまった。
 向けられたのは強い睨み。
 瞬間、何か釘のようなものが刺されてしまったみたいに、僕の身体は動かなくなった。