「…………」

 私はそっと、彼の手の平を天へと向けた。
 目覚めたばかりなら、声は響いて仕方がないかもしれないから。

『おはようございます。調子はどうですか?』

 ゆっくりと、彼の手の平に指で文字を書いた。
 慣れないそれはたどたどしく、ちゃんと伝わっているのかは怪しいところだけれど。
 彼の手を元に戻して少し持ち上げて、その下に私の手の平を広げて置いた。

 反応、してくれると良いのだけれど。

 ピ。ピ。ピ。
 
 無機質に響く機械の音が、耳に届く。
 彼はぴくりとも動かない。

「…………うぅ…」

 堪えきれなくなった嗚咽が零れた。
 せめて文字が返って来るまでは、と決めていたのに。