巻き込まれて、とは。
 感じた所、何処かが折れている訳でも、痛い訳でもない。
 眠っていたのは確かだから、脳震盪は起こしていたのだろうと分かるけれど――

「巻き込まれて…?」

「えぇ、巻き込まれて」

「私は、トラックと接触したのですか?」

「いいえ、とだけ」

 トラックと接触したわけではない、巻き込まれ?

 一瞬、私は先生の言っていることが分からなかった。
 詳細が欲しくて、先生に「あの」と声をかけた瞬間、

「ただ――」
 
 と先生は置いた。
 私が言葉を続けない一拍遅れて、続けざまに放たれる言葉。

「その現場には、君の他にもう一人いたよね?」

 と。

 詳細を語られるまでもなく、私は激しい動悸に襲われた。
 もう一人――彼に、何かあったのだと理解した。
 
 私は先生に、彼の病室へと連れて行くよう頼んだ。
 しかし先生は、まだ治療中で病室ではないんだ、と答えた。

 それが何を意味するか。
 考えなくとも、直感した。

 大型のトラックに巻き込まれた事故で、脳震盪一つなんてあり得ない。
 彼が、私を護ってくれたのだ。
 不意に感じた横への衝撃は、彼が私を突き飛ばした力。その際のダメージで脳震盪を起こしただけで、元私が居たであろうその場に留まった彼は――

 嫌な予感しかしなかった。