そう言って微笑むのは、アリスの宿敵の怪盗ユオだった。

アリスは戸惑いを隠し、「美術品だけでなく人間まで攫うようになったの?」と冷たく言った。

ユオは、クスクス笑ってアリスの髪に触れ、そのまま抱きしめる。アリスは「放して!!」ともがくが怪盗ユオの力の方が強く、アリスは声を上げることしかできない。

「……ある日、絵画を盗みに行った帰りに、公園で踊るあなたを見ました。その時に思ったんです。ああ、何て美しいんだろう。どんな宝石や絵画より素晴らしい。手に入れたいとね」

ユオは、アリスの耳元でささやく。そのまま耳に口付けられ、アリスは「放してよ!!」と顔を赤くして叫んだ。

「手に入れたいなら、その人を誘拐すればいいと言うの?あなたがそうするのなら、私は全力であなたに抗うわ。絶対に家に帰ってみせる!」

ユオが体を離すと、アリスはユオを思い切り睨みつけて言った。

父の淹れてくれる紅茶、母がしてくれる刺繍、弟たちが出してくる推理クイズ…。

大好きなあの場所に帰れることができるなら、アリスはどんな凶悪犯とも対峙すると決めていた。そんな瞬間が、ついに訪れたのだ。