恐ろしい考えが頭に浮かび、アリスは必死で縄を外そうともがく。しかし、拘束から逃れることはできない。

「……一体どうすれば……」

探偵が誘拐されるなど、探偵の恥だ。アリスはシャーロック・ホームズの顔に泥を塗ったような気がした。

アリスが必死でもがいていると、コツコツと規則正しい足音が遠くから聞こえてくる。アリスを誘拐した犯人だろうか。

ガチャガチャとドアの前で音がする。やはり、部屋には鍵がかけられていたのだ。しかし、手足を縛られた状態ではドアまでたどり着けないのだが。

ドアが開く音がする。アリスは慌てて気を失っているふりをした。犯人がどんな人物なのかを知るためだ。

コツコツと足音を立てながら、犯人はアリスに近づく。そして、ベッドの上に座り、アリスを抱きしめる。アリスは恐怖で叫びたいのを堪えた。

犯人の情報で唯一アリスがわかったのは、犯人が男だということだ。

犯人は裏路地にアリスを引っ張り、気絶させた。アリスを気絶させた後は車で移動しただろうが、裏路地に車は入れない。おそらく、離れた場所に止めたはずだ。

女性の力では、アリスを抱き上げることなど不可能だろう。引きずって連れて行けば、地面に引きずった跡が残り、警察に見つかる確率も上がる。