相手は強く布を押し付ける。アリスの体から力が抜けていった。

アリスの意識は、そこで途切れた。



ふわり、と漂う花の香りにアリスはぼんやりと思考を動かす。この匂いはラベンダー。たしか花言葉は……あなたを待ってる。

アリスが目を開けると、全く見覚えのない場所にいた。

アリスは柔らかなベッドの上に寝かされていた。小さな部屋には、様々な絵画が壁に飾られている。おそらく、美術館などから盗まれたものだ。新聞に載せられていたものと同じ絵画が飾られている。

部屋には机や椅子、本棚には本が数冊並べられていて、暇つぶしにはなりそうだ。

しかし……今、アリスは拘束されている。手足を縄で縛られていて身動きが取れない。

「……誘拐された?」

アリスは犯人は誰なのか考える。しかし、思い当たることはない。アリスが解決した犯人たちは留置場にいるはずだし、アリスや家族が恨まれるようなことをした記憶もない。

身代金目的での誘拐はよくある話だが、アリスの家は特別裕福なわけではない。目的も犯人もわからず、アリスは緊張する。

もしも、ここで襲われてそのまま命を奪われたらーーー……。