ユオの言葉に、アリスは目覚めてから自分の行動が監視されていると知り、小芝居をしたことが恥ずかしくなった。ユオは、アリスが目を覚ましたことを知っていた。だからキスをしたのだ。

「プライバシーの侵害じゃない!」

アリスが言うと、ユオは「あなたがどんな反応をするのか見たかったんですよ」と悪びれる様子もなく言う。

絶対に逃げてやる、とアリスは思った。

「最初は、この部屋から脱出してください。この部屋のどこかに、部屋のドアを開ける鍵があります。ただし、探せるのは一回だけです。…これをヒントにしてくださいね」

ユオは、アリスに一枚の紙を渡し、部屋から出て行こうとする。その背中に「無事に帰ったら、警察にあなたの国籍を話すけど構わない?」とアリスは訊ねた。ユオはアリスの方を振り向く。

「……国籍?」

「あなたはスペイン人じゃないかしら?私にキ…キスをする前に、あなたは「te amo」と言ってたわね。「te amo」はスペイン語で「愛してる」という意味よ」

ユオは推理を披露したアリスをしばらく見た後、「ふふふ」と笑い始めた。