「……そう言うと思ってましたよ」

ユオはそう言うと、着ているスーツのポケットから小さなナイフを取り出す。そして、アリスに近づいた。

「な、何をする気!?」

ユオは、黙ってナイフをアリスに近づける。アリスは思わず目を固く閉じた。

自由に動かせなかった足が、自由に動く。アリスが目を開けると、足を縛っていた縄が解かれていた。

「え…?」

刺されると覚悟していたアリスは、予想外のユオの行動に驚く。

「じっとしていてくださいね」

ユオは、アリスの背後に回るとアリスの腕を縛っていた縄も解いてくれた。突然解かれた拘束に、「家に帰してくれるの?」とアリスはユオに訊ねる。

ユオは意地悪な顔をして、「それはあなた次第です」と言う。

「どういうことかしら?私は今、手足が自由に動くのよ?あなたから逃げることなんて容易いわ」

アリスが腕を組み、ユオを見つめる。アリスとユオは、おそらく十センチ以上も身長差があるだろう。しかし、ユオはがっしりした体格ではなさそうだ。

逃げられる、とアリスは思った。