拓の家に着いた。
あたしはドアの前で1度深呼吸して、部屋に入った。

「おかえり」
そこにはいつもと変わらない拓がいた。
「ただいま…」
なんとなく目を合わせづらい。
「さっきの電話どーした?なんかあった?」

拓の家に帰る前に、あたしは拓に電話をかけた。
嘘を固めるために。
仕事を終えた後、いきなり襲われてお金を取られたことにしようと考えたんだ。

そのアリバイを拓に話すと、拓の顔が一変した。
「は、お前何やってんの?なんですぐ連絡してこなかったの?」
「そんな余裕なくて…」
あたしは苦し紛れに嘘をついたけど、本当は内心拓が怖くて泣きそうだった。
「携帯貸して。そいつに連絡するから」
そう言って拓はメールをし始めたけど、話が噛み合う筈がなくしばらくして拓がこっちを向いた。
「こいつそんなことしてないって言ってんだけど」
煙草を吸いながら意味ありげに笑う拓。
「嘘だよ…」