あたしは急いで車を降りて、少し離れた場所に行った。
「地元の駐車場…?」
「まだなの?」
拓は、イラついたような声だった。
「もうちょっと!」
「急げよ」
あたしは電話を切ると、急いで車に戻った。
「なに、彼氏?」
男がニヤニヤしながら言った。
「違いますよー」
あたしは笑いながら嘘をついた。
「てかしないのー?」
優柔不断な男に、あたしは少しイラついていた。
「一応大人だからねー車はねー…今度じゃだめ?」
――こういう時だけ"大人"使うんだ。
「今日がいい」
あたしは折れない。
「急ぎでいるの?」
「うん。だから今日」

男を説得していたら、また拓から電話が来た。
あたしは、携帯を持って車の外に出た。
「今何してんの?」
拓の声は怒っていた。
「このまま触らしとけばもうすぐできる」
「は?お前触らしてんの?」
――マズった…!
「や。そゆことじゃなくて…」
「お前今言っただろ」
拓は止まらない。
怖い。
「今日じゃなきゃだめ?」
「だめに決まってんだろ」
「もしできなかったら…?」
あたしは、恐る恐る聞いた。
「もうバイバイだろ」
――え…なに?客と?
「もう会わないってこと?」
「当たり前だろ」
拓と会えなくなるのは嫌だった。
「頑張るから、もうちょっと待って」
「早くしろよ」
あたしは必死に拓を引き止めて、急いで車に戻った。
車に戻ると、男は煙草を吸っていた。