その日家に帰ると、拓の前に手を組んでいた人からメールが来た。
あたしがシカトしてるからだった。

[どうせ、実際にお金見たら渡したくなくなったんだろ?]
――違うし…
否定のメールを打っても、男はしつこかった。
そのうち、こんなメールも来た。
[俺は全部知ってんだからな。投稿消しても、サイトには履歴は残ってんぞ?]
さすがに怖くなって、あたしは拓に電話で相談した。

「大丈夫だよ」
話を聞いた拓は、冷静に答えた。
「でも…」
「そんなんただの脅しだから」
不思議とあたしは、拓の言葉を信頼できた。
びくびくしながらも、あたしはその男を無視し続けた。
すると、2、3日もしたらメールはぱったり来なくなった。


拓が信頼できるのは、拓が嘘をつかないからだと思った。
自分自身嘘が嫌いだから、自分も嘘はつかない。
筋が通った人だと思った。


慎吾とは、メールをするだけで会わない日が続いた。

[早く稼いで俺に頂戴♪]
――貢げってこと?
[今お金ないもん]
嘘だ。
最近は、平気でよく嘘をつく。

なんで平気なの?
罪悪感も感じないの?
慎吾には女の人がいるから…
それは言い訳。
だからって、あたしはこんなことしていいの?
いいわけがない。
あたしすごい惨めだ。


気付いたらあたしは、自分で自分を傷つけていた。
あたしは、左手首を切った。
最初は浅くて、血もあんまり出なかった。
傷つけたら、罪滅ぼしになる気がした。