煙草を吸い終わった拓は、あたしの上に手を置いた。
「上来て」
「あ。うん…」
拓があたしの腰に手を回して、あたしを上に乗せた。
「ディープして」
したくても、かっこよすぎるから、恥ずかしくて自分からはできなかった。
あたしがためらっていると、拓があたしの頭に右手を回した。


拓は優しかった。
こんな気持ちは久々だった。
拓を知りたい―…
この気持ちが、あんなに大事になるなんて思ってもいなかった。
この人は、好きになっちゃいけない人だった。


全てが終わった後、拓はまた煙草に火をつけた。
あたしは、拓の左腕に入れ墨のようなものを見つけた。
「これ…彫ったの?」
「んー?自分でやった」
よく意味はわからないけど、とりあえず痛そうだった。
「てかお前、時間大丈夫なの?」
「あー…もう出る」
門限のあるあたしは、早く帰らなきゃいけなかった。
「んじゃ気をつけてな」
そう言いながら、拓がドアを開けた。
「うん。ありがと」
あたしは、靴を履いて部屋の外に出た。
「駅着いたらメールして」
「わかった。じゃあねっ」
「ばいばーい」
そう言ってお互い軽く手を振り、拓はすぐドアを閉めた。
拓の優しい心遣いは、あたしを癒してくれた。
当たり前のように、帰りを心配してくれる。
さりげない言葉でも、それがとてつもなく嬉しかった。


そんな心遣い、慎吾にはもうなかった。