4月に入って、あたしは中3になった。

その頃あたしはやっぱり高橋先輩が頭から離れなくて、離れかけても校内で会うとだめだった。
目で追ってた。
なんでかわからないけど、あたしはその事実を慎吾に言わなきゃって思った。
なんだか後ろめたくて、慎吾に打ち明けることで罪を消したかったんだ。

学校の帰りにピアノに寄って、その帰り道に慎吾に電話した。

「…もしもし」
「あ。今大丈夫?」
「バイト始まるまでなら。どしたの?」
「あのね……」
あたしは、高橋先輩のことを打ち明けた。
「でも今の気持ちはちゃんと慎吾だから!」
これも本当の気持ち。
「……」
慎吾は黙ったままだった。
「慎吾…?ごめんね…」
「うん。わかった」
「ほんとに今は慎吾だから…」
「うん。じゃあそろそろバイトだから切るね」
「わかったあ。ありがとね」
「うん。じゃ」
そう言って、電話は切れた。
怒りもしなかった慎吾。
――大丈夫…なの?
とりあえず、その後はその話題に触れることはなかった。
それからの慎吾の様子も、特に変わりはなかった。


でも…
5月に入るか入らないかぐらいの時期の昼休みに変化があった。

あたしはいつも通りにお弁当を食べて、クラスの子達とトランプをしていた。
その時ちょうど、慎吾からメールが来た。
[てか大事な話ある]
――大事な話…?
気になったあたしは、すぐに返事を打った。
[どうしたの?]
[俺、麗美を幸せにする自信ない…]
――え?どういう意味?
[なんで?十分幸せだよ?]
[ごめん…]
――ごめんってなに…?
[今電話できる?]
[今昼休みだから無理かな]
[どゆ意味?]
[別れよ]

そのまま昼休みは終わって、授業によってメールは中断された。

その日の夜。
あたしは慎吾と電話をした。

「どゆ意味なの?」
「だから、幸せにする自信なくなったの」
慎吾の言葉には、嘘が見えた。
これはたぶん女の勘。
「ほんとにそれだけ?違うんじゃないの?」
「んー…」
黙り込む慎吾。
――やっぱり嘘だ。
「違うんでしょ?」
「まず、こないだの元カレのやつで麗美信用できなくなって…」

終わってなんかなかった。
やっぱり許してもらえるはずなかった。