いつの間にか、初めてひとつになった冬を越えて、季節は春。
僚平の誕生日が近付いていた。

この頃、僚平は冷たかった。
前から多少は冷たかったけど、最近は怖いぐらい冷たい。
どんどん冷たくなる僚平が怖くて、あたしは別れを選んだ。

部活に行く前に僚平を呼び出した。
「なに?早くして」
メールでは冷たかったくせに、いつもと変わらない笑顔に、あたしの心は揺れた。
「えーと…あのね…」
あたしは何も言えなくて、沈黙が続いた。
風が木を揺らす。
風が気持ちいい、晴れた日だった。
「…別れ…よ?」
その言葉と一緒に出てきたのは、大量の涙。
「わかった…」
僚平が、泣きじゃくるあたしを優しく包んでくれた。
「なんで泣くんだよー」
最初の頃みたいに、優しく頭をなでてくれた。
すぐに襲ってくる後悔。
あたしは、ほんとにこの人を離していいの?
なんで、この人の優しさにも目を伏せたの?
でも、もう手遅れ。
あたしは僚平のポケットに手紙を入れた。
「最後に目閉じて?」
最後は、あたしからキスしたかった。

「じゃあ、俺戻るね」
そう言って、僚平は高校校舎に走っていった。
あたしは、壁にもたれて少し泣いた後、部室に走っていった。

最初の別れ。