「住んで一年半にもなる街の観光案内をして貰ったところで腹の足しにもならないよ。
改めて訊くけど、エディ」

「はいな」

赤い髪の風来坊は、壁に掛かる青系の絵画を背に鷹揚に振り向く。
トーマス医師の趣味だろうが、エディ特有の色彩の対比は存在感を浮き彫りにさせて戸惑わすばかりだ。
今まで東の大陸の閉塞的な環境に居た割に、身のこなしに都会的な印象があるのはやはり生まれのせいなのか。

「オレは此所に来る必然があるけど、お前は」

必然というのは、いささか大袈裟か。
オレの場合は、ただ、ちょっと規模の大きい資格試験で点数が良かっただけ。
たまたまヤマを張った処が出て、何て安易な事が通用するものではないけれど… 。

ついてた。

それだけだ。


でも、

「医者目指す気でも無いだろーに」

「サラサラ無いよ」

「だろうな。でも、同居するって、何でオレのとこなんだ」

エディは持ち前のゆとりのある雰囲気で、ふ、と笑う。

「教えない」

呆気に取られた隙にエディは入口左手の階段を昇り始める。

「あ、おいコラ」

「明日にして。昨日の今日で疲れてるんだ」