担任が教室に戻ってくると、立っていたクラスメイトたちは一斉に席に着いた。

私と喋っていた拓海も、前を向く。


よく見慣れているはずの拓海の後ろ姿ですら懐かしくて、ひとりでにやけるのを我慢した。



……けれど。


「よーし、席替えするぞー」


ひととおりHRが終わったあとで、最後に担任があっけらかんと言い放った言葉。


今日から新学期。

そっか。席替え、するんだ。


それは、よくある当たり前のことのはずで、むしろ喜ぶクラスメイトの方が多いわけで。


「まじか。席替えだってよ、杏」

「ね〜」


でも私は、拓海の姿を眺められるこの席を離れがたいと思ってしまった。