カタン、と、窓の外でなにかが倒れる音がした。


「……ゆめ?」


その音にいち早く反応して窓を見た優希くんが、ポツリとその名前を呼ぶ。


瞬間、もう私の出番は終わったと思った。



「待っ……」


去っていく小さな背中と、揺れる黒髪のポニーテール。


……聞いてたんだ、きっと。

あんなところで逃げられたら、勘違いさせちゃう。最後まで聞いてくれたら、絶対に結末は違うはずなのに。



優希くんの焦ったその表情を見て、私は彼の背中を押した。

……拓海が、私にしてくれたみたいに。



「っ、遠山さん……?」

「行ってあげて。優希くんの好きな人は、白石さんでしょう?」