「杏」
まっすぐと私の目を見た拓海は、優しい声で私の名前を呼んだ。
勇気づけるかのようにポンと頭に乗せられた手があたたかい。
「今日のお前、すっげー綺麗」
そして次に発せられたその言葉は、私にとびっきりの力をくれた。
「……もう、もっと早く言ってよ」
「悪りぃ。なんか照れくさくて」
「ふふっ、なにそれ」
思わず出そうになった涙を、グッと堪える。
「行ってくるね、拓海」
「おう」
拓海に笑顔を向けて、私は教室をあとにした。
メニュー
メニュー
この作品の感想を3つまで選択できます。
読み込み中…