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放課後になることを、これほどまでに早く感じたことはないかもしれない。
「……おい、顔すごいけど」
「えっ、そ、そんなこと……」
「いやもう俺までその緊張移りそう」
帰りのHRが終わっても一向に席を立ち上がろうとしない私に、前の席の拓海が苦笑しながら話しかけてきた。
私はこれから、優希くんに会いに行く。
ちゃんと。今度こそ。気持ちを伝える。
そして、ちゃんとお返事をもらってくる。
「そんな気負いするなよ」
「うん」
拓海はそう言って背中を押してくれた。
ずっと変な動機がおさまらないけれど、それでも頑張ろうと思えるから不思議。