振り返ると、うしろにいてくれた拓海が、優希くんに見えないように背中を押してくれている。
"……頑張るんだろ?"
声は出ていない。けど、動かされた口はたしかにそう言っていたのを私は見た。
……本当、拓海にはいつも助けられっぱなしだ。
拓海のそばって、どうしてこんなに安心するんだろう。
こくりと小さく頷いてみせると、背中に触れていた手がそっと離れる。
頑張る。……うん、頑張るんだ、私。
もう触れていなくても、拓海が背中を押してくれているのはわかりすぎるくらいに伝わってるから。
だからもう、覚悟は決めた。
もう一度、しっかりと顔を上げて、私は優希くんの目を見る。
「……優希くん。今日の放課後、時間ありますか」