「おー、高野」


男子たちの1人がその人物の名前を呼んだものだから、私の聞き間違いであって欲しいという願いは一瞬で崩れ去った。



「朝からからかうのやめてあげなよ。唐沢と遠山さん、付き合ってないんだから」


冷静な優希くんの声。

一瞬みんなが静かになったあとで、真横の拓海が「ほーら。だから言ったろ」と男子たちに笑い飛ばした。


「えー、まじで付き合ってないわけ?」

「にしちゃ仲良すぎだろお前ら」


優希くんと拓海の言葉でやっと本気で付き合ってないことをわかってくれたらしい彼らは、先に玄関を出て階段を上っていく。



そんな後ろ姿を見ながらも、私はどうしても優希くんの方を向くことはできなかった。