……と、思っていたのに、クルッと振り返って私の顔を見た拓海は、次の瞬間思いっ切り私の両頬を引っ張った。


「いっ、いひゃいいひゃい!」


むにーっと引っ張られて、伸びる伸びる私の頬が。


「バーカ」

とんでもなくまぬけずらになったであろう私の顔を見て、拓海はそう言った。



「ば、ばかって……っ!」


ようやく解放されて、ヒリヒリする頬をさすりながらキッとやつを睨む。


笑顔を崩さないとかそんなの、いまこの瞬間から無意味になった。

痛すぎる。急になにするんだ。バカはどっちよ、バーカ。


朝の玄関の人の量をちょっとは考えて欲しい。


こういう何気ないスキンシップが、ああいう誤解を生むんだ。……付き合ってるとか、そういう。