「指導が必要な生徒にはしてるよ。お前に必要なのは」

ごろりと無造作に隣へ寝そべる先生を見やる。タバコは捨てたのか、その残り香だけが苦く香った。

そして、私を見ている先生の目がびっくりするほど優しく見えて、ドキリと心臓が跳ねた。

「お、今俺に惚れたか?」
「な訳ないです。変な先生」

先生が何を言い出すのかと呆れる。そんな私の頭をやや乱暴に撫でて、「お前には愛情が必要だろ」と呟いた。

「あ、愛?」
「違ったか?まぁなんにせよ、俺達教師が与えるのは説教だけじゃないってことだ。少しは大人を頼れ」
「…うざ」

見透かされたような気がして、私は勢いよく立ち上がった。
そのまま屋上の出入り口に向かって、それから先生の方へ振り返った。

「じゃあ、先生が私の彼氏になってくれますか?」

ポカンと呆気に取られた顔が面白くて、私はしてやったりとほくそ笑んだ。