充足感のある、笑顔の彼らの横をすり抜けたとき、俺は自分が何でここに居るのか、いなきゃならないのか、分からなくなってしまうような感覚に陥った。


 俺は、あんな、満足した顔を、今日のステージを終えたときすることが出来るのだろうか?


 どくん、と。

 嫌な汗が、頬を伝って、真新しいTシャツの襟ぐりを湿らせる。


 「景太!」


 抑えてはいるが、鋭い保の声に、俺は一瞬硬直してしまっていた脚を、無理に回転させて、ステージに着いていた二人の下に駆け寄った。
 
 そして、いつものポジションに立つ。