「………ごめん。
でもこれ、喧嘩じゃないよ!
あの後、俺もすぐ家帰ろうと思ったんだけど、その途中で、絡まれたんだよ。
――そんで、殴られた。けど。俺は、手ぇだしてないよ。
………だから、大丈夫。
それに、きっと、メイクしたら、こんな傷跡目立たなくなるよ」
そこまで言って、俺はもう一度ごめん!と頭を下げた。
明弘がーーー保が、このライブにかけてたってことを知ってる。
たとえどんな理由があったとしても、同じバンドのメンバーでもある俺が、二人の夢を壊すなんて、出来るはずない。
それをしてしまいそうになっていたのだと、申し訳ない気持ちはするのだけれど、本当に自分がすまないと思っているのかどうかは、しっかりとは分からなかった。
それでも。まずは謝ろう。
そう思える程度には、思考は働いているようで、安心する。