「…………景太。その顔、どうしたんだ?」


 店の有線が無駄に響く、沈黙の時間がしばらく続いた後、保がゆっくり口を開いた。


「え」


「え、じゃねーよ、景太!
お前、左頬腫れてんぞっ。
―――まさか、喧嘩でもしたのか!?」


 保に言われて、自分の左頬をさすると、少し鈍痛が走って。
―――そういえば、昨日殴られたっけな。ってなことを思い出した。

続けて明弘が、唾が飛んできそうな勢いで、怒鳴ってくる。
 なのに。唾かかりそう、なんて考えが一瞬でも先行してしまった辺り、事の重大さが、今のいい加減な俺の思考には、現実とリンクできていないようだった。