父親の実家はとても暖かい場所だった。

兄と2人で幼稚園に入り
父親は仕事があるから、祖母と祖父が
毎日送り迎えをしてくれて
毎日祖母の作るお弁当を幼稚園で
自慢していた。

毎日がとても幸せだった。
祖母を母親のように思い、祖父は
2人目の父親。
車を持っているのは祖父だけだったので
祖母が仕事のときは祖父が
いろんなところに連れて行ってくれた。

兄とは喧嘩ばかりで、いつも叩きあって
泣いていた。

そんな毎日が私にとっては
キラキラしていた。大切だった。

そんなある日。

「拓巳、汐織。
リナちゃんだよ。挨拶して」

私が4歳のときだった。

父親に紹介された女性。
後に、父親と再婚して新しい母親になる人。

「しおりです!」

「よろしくね、汐織ちゃん」

柔らかく笑う『リナちゃん』と
私はとても仲良くなった。

「ねえパパ。
今日はリナちゃんと遊ばないの?」

「リナちゃんは今日はお仕事だから
また今度な」

ちぇーとつまらなそうにする私を見て
毎日家にいてくれたら、と思ったそう。

父親の中に、初婚のリナちゃんが
いきなり2人の母親として受け入れてくれるのか
そんな不安があったそうだ。

父親がリナちゃんとの結婚を考え始めた頃
私はリナちゃんに言った。

「リナちゃんはしおりのお母さんになるの?」

プロポーズもしていない父親の前で
子供の発する言葉に戸惑ったリナちゃん。

「うーん、そうね〜。
汐織ちゃんと拓巳くんは、リナちゃんが
お母さんでもいいの?」

リナちゃんは、私と兄に聞いた。

「いいよ!」
「いいよー!!」

私と兄は即答だった。

そのとき、顔を見合わせて
笑う父親とリナちゃんの顔を忘れられない。

兄が6歳、私が5歳のときに
父親とリナちゃんは結婚した。