当時、関東の養護施設に預けられた私は
幼いけれど心を閉ざし、2歳なのに
一言も喋ることなく、ひとり遊びをしていた。

そして、九州に住む父親がそのことを知り
裁判をして親権を取り、私を迎えに来た。

「ごめんな、汐織。
やっぱりあの時引き取ればよかった」

そう言って、私を抱きあげようとしたけど
私が拒絶し大泣きした。

施設の先生はそのとき初めて
私の泣く姿を見たと。

今まで泣きもせず、笑いもせず
ただ無表情で遊んでいたそうだ。

「汐織、パパだよ。
遅くなってごめんな」

パパ、とゆう一言で
私は父親が広げた腕の中に
吸い込まれていった。

「お家に帰ろう。パパとじーじとばーばと
お兄ちゃんと暮らすんだよ」

そして私は九州の父親の実家に
住むことになった。