「お前か……最近、若奈のそばをウロウロしているクソ野郎は……」

風見が要に声を掛ける。
朋世は慌ててカフェ看板の隅に隠れた。

「いきなり随分な言いようだな。まぁ、間違いじゃないからいいけど。それで、その“クソ野郎”に何か用?」

要はいたって冷静だ。
まるで、彼が後をついてきていた事を知っていたかのよう。
若奈は本当に何も知らなかったようで、風見の登場に動揺を隠せないでいる。

「用なんて一つに決まってるだろ。若奈は俺のものだ。近寄るな」

風見はこみ上げるイライラを必死で抑え込みながら言う。本当に必死だ。
朋世はあんな彼の姿を知らなかった。
愛されてなんていなかった。

「酷い言い方。まるで物みたいだな。大体、お前とは別れたって彼女も言ってる。そうだろ、若奈?」
「うん……」