「大体、こんな時間に男の部屋に来て何もないとでも思ってたのか?」

朋世の首筋にペロッと舌の感触が伝わった。
怖い……それ以上にこういう行為を若奈にもしているのかもしれないと思うと悲しかった。
彼女の目から自然と涙が溢れる。

「……やめて!」

朋世は大きな声を出して、要の身体を思いっきり突き飛ばす。
彼はソファーから転がり落ちて、床でぶつけた腰を「痛ぇ……」とさする。
当たり前だ。痛いようにしたのだから。

「帰る!」

朋世は一言だけ告げて彼の家を後にした。


『俺は朋世が思っているみたいなヒーローなんかじゃないから』


自分に家に戻っても彼が言ったこの言葉だけが耳に焼きついて離れない。
昔とは違うと言われているようで心がズキズキと痛んだ。