「“ただ、お喋りしてただけ”って言えば納得?」
「それは……」
「それとも、俺と若奈ちゃんはそれだけの関係に見えなかった?」

要は再度ブラックコーヒーを啜った。
sitoronから出てくる時の二人の姿が朋世の頭の中で甦った。
仲良さそうで、若奈の幸せそうな顔。

朋世は握り拳にグッと力を込めて、奥歯を噛みしめていた。
悔しいけど、彼の言う通りだ。
朋世の目には彼らがただのお友達という風には見えなかった。

「……若奈には彼氏がいるんだよ」

朋世はやっとの思いで言葉を絞り出す。
自分の口からは絶対に言いたくない言葉。

「だから?」
「だから……」
「“彼女や先輩の幸せを壊さないで”とでも言う気?」
「……」

朋世は黙り込んでしまう。