「二人とも仕事、仕事で息子のことはたいして気にならないんだろう。はい、トモにはミルク入りの甘いココア」

要は二人分のカップを運んでソファーテーブルに置いた。

「ありがとう」

朋世はカップを手にしてフーフーと息をかけて冷ます。
小さい頃からミルクたっぷりの甘いココアが大好きな朋世。
彼がそのことを覚えてくれていたことが嬉しかった。

「それで、トモは何をしに俺のところへ来たんだ?まさか、ココアを飲みに寄ったわけじゃないだろ?」

要はそう尋ねて自分のブラックコーヒーを(すす)った。
朋世は懐かしさに包まれて本来の目的を忘れかけていた。


そうよ!アタシはココア飲んで、思い出にまったりと浸かりにきたわけじゃない!


彼女のカップがコトッと音をたてて、テーブルに戻される。