「菅田 要君、居るんなら早く開けてよ」

朋世は機嫌悪そうにものを言う。
クリスマスイブの夜に一度会ったが、彼が幼稚園時代のヒーロー“菅田 要”と知ってからは初めての顔合わせだった。

“誰かも分からない名無しの権兵衛”発言にも朋世は少し怒っている。
彼は朋世が誰なのか知っていてあんな事を言ったのだ。
人の事を馬鹿にしているに違いない。

「今にも危害を加えられそうな顔で玄関先に立たれたら、出迎えるのもためらうだろ」

「アタシの顔が怖いって言いたいの……?」

「怖いだろ?現在進行形で」

彼はからかって人差し指で朋世の額をピンと軽く跳ねた。
怒ってはいるがそんなに怖い顔をしているつもりはなく、朋世は不満そうに自分の額を撫でる。