朋世はいてもたってもいられず、自分の部屋を出て階段を駆け下りた。

「ちょっと出かけてくる!」

玄関でそう声掛けして靴を履いていると、母は「もう暗いわよ!」と注意した。

「すぐ帰るから」

朋世はそう言って、母の返事を待たずに家を出た。
行き先はもちろん隣の家。
下校中にあんな光景を見せられて胸糞悪いったらない。

“ピンポーン”とインターホンを鳴らす。
少し待ってみたが、なかなか出てこない。
中にいるのは分かっている。
彼がひとりでいる事も。

“ピンポン、ピンポーン”と今度は二回鳴らした。
居留守なんて小賢(こざか)しい事をする彼に催促の気持ちを込めた。
それから少し待つと、玄関ドアがゆっくり開く。
要も制服のまま、学ランの上着だけ脱いでいた。