「な、何して…!」

「先生照れるの早すぎます。こんなの今時の高校生でも照れませんよ?」


あえて敬語は崩さず、私を遠回しにバカにしてくる智也。


「手を離して。文字が書けないから」
「わざと書けないようにしてるんです。」


智也はふっと笑った。


「こんなの誰かに見られてたらどうするの?」

「何のことですか?俺はただ、先生の字が間違えてるのを指摘しようとしただけなんですが…」

「え……?」


私は紙を見ると、智也の言う通り漢字ミスがあった。


「それならいちいち手を握らなくても!」

「普通に言ってもつまんないじゃないですか。楽しいんです、先生を照れさせるのが」


にっこりと作り笑いを浮かべる智也を見て、私は確実に智也のペースに流されてることに気がついた。