まあ演じるというか、本来これが正しい関係なんだけれど。
「この時間はこれをして…」
「そうね。じゃあこっちはこうかしら?」
「そうですね」
思っていたよりスムーズに進み、うまくいけば今日中に終わりそうだ。
「なんか黒崎先生、ちゃんと先生してますね」
「……え?」
「だって昔もよく俺に、勉強教えてくれてたじゃないですか」
懐かしそうに笑う智也。
とりあえず、その笑顔の破壊力がやばい。
大人びた顔立ちなのに、どこか幼げな表情。
俗に言うギャップというやつだ。
普通に1号一人の生徒として出会っていたらな、なんて思う。
「でも智也、昔から賢かったからほとんど教えることなかったよね」
私も昔を思い出し、言葉を返したその時。
「あーあ、黒崎先生。何普通に話してるんですか?」
智也が意地悪そうに笑うものだから、いつものように接してしまったことに気づく。