ぼーっとしていて幼く、なんだか可愛いと思ってしまう。


「……綾ちゃん?」


久しぶりに聞いたその呼び方。
もしかしたら智也は、昔の夢でもみてたのだろうか。


しばらくぽけーっとしていたかと思えば、突然私を抱きしめる。


「智也?」
「良かった…」
「え……」

良かった?

ひどく、安心した声。
何があったんだろうと思った。


「夢の中で、綾が泣いてた」


いつもより少し掠れた声で話す智也。
やはり夢をみていたらしい。


「どんな夢みてるのよ」


私が泣いてる夢だなんて、恥ずかしい。


「うん。だから今、綾が笑ってて安心した」


ぎゅっと力強く抱きしめられる。
苦しいけれど、どこか温かい。


「当たり前でしょ。だってすごく幸せだから。
今笑ってられるのも全部、智也のおかげかな」


私も彼の背中に手を回し、抱きしめ返す。


「なら良かった。俺も綾が隣で笑ってくれるだけで、幸せだから…」


その声は優しく、逆に泣きそうになった。


智也にとったら何気ない言葉かもしれないけれど、私にとったらすごく嬉しくて心温まる。