どうしてリラがこんなことを言い出すの?
まだ彼女には何も話していないのに。
だけど、直ぐに気が付いた。

オリーヴィア様がリラに話してしまったのだと。

私はたまらない気持ちになってリラを見つめた。

私のいない所で知らない人にそんなことを聞かされて傷ついたのではないだろうか。

小さな胸を痛めたのではないの?

姫君への怒りがこみ上げる。いくら尊い身分だからと言ってやってはいけないことがある。

リラには何の罪もないのに、大人の事情に巻き込んで傷つけるなんて許せない。

レオンも同じ想いなのか、とても険しい顔をしている。

だけど、今は怒るよりリラの気持ちを落ち着かせなくては。

上手く子供でも分るような説明をしようと頭を悩ませていると、リラが更に言う。

「ねえ、レオンはリラのパパでしょ?」

何て返事をしようかと考えていると、レオンは覚悟したような表情で言う。

「そうだ」

私は驚いてレオンを見つめた。

この場にははカイル以外の部下が何人もいるのに、認めてしまうなんて。

大丈夫なの? けれどレオンはリラにはっきりと言った。

「今まで側に居てやれなくてごめんな。だけどこれからはずっと一緒にいよう」

レオンの表情は、皇帝としてのものではなく、娘を愛するひとりの男性のものに変わっていた。穏やかでとても優しい顔。

でも、リラはどう思うのだろう。

突然パパが出来たなんて言われて平気でいられる?

ハラハラしていたけれど心配は無用だったようだ。リラは嬉しそうにレオンに抱き着く。