かなりの距離を走ってから馬車は速度を落として止まった。

ここにリラが居るのだろうか。

窓の外の様子を見ようとすると、外側から扉が開いた。カイルだった。

全然気付かなかったけれど、彼も一緒に来ていたようだ。

「問題は?」

私の手を引いて馬車を降りたレオンが、短く聞く。

「予定通りです」

レオンはカイルの言葉に頷くと、私には優しい声音で言う。「イリス、これからリラを迎えに行く。直ぐに戻って来るからここで待っていてくれ」

目の前には古い二階建ての屋敷がある。恐らく貴族の別荘として使われている家だ。周囲を背の高い樹々に囲まれ中の様子はよく分からない。

「リラはこの中に居るの? だったら私も一緒に行きたい」

レオンの様子からリラは無事だろうけど、心細い想いをしているだろうから一亥も早く側に行きたい。

私の気持ちを分かってくれたのか、レオンは困った表情をしながらも勝手な行動をしないことを約束するなという条件付きで承知してくれた。

中に入るのはカイルと屈強そうな騎士三人。私はレオンと彼らに守られ玄関の扉を開いた。

館の中は薄暗くて静まり返っていたけれど埃が積もっている訳でもなく、空気も清浄だった。

最近、誰かがこの館で暮らしていたのは間違いないように思う。

辺りの様子を伺いながら二階への螺旋階段を上っていく。

レオン達はどこにリラが居るのか把握しているようだ。足取りに迷う様子は全くない。

二階の一番奥の部屋の前に立つと立ち止まると、カイルが扉を開いた。