「おーい、児島。帰るぞ」

レジ閉めを終えた店長が声をかけた。

「はぁい」

俺は灰皿を持ち、流しのシンクに置いておく。こうすれば、明日の朝出勤してきたパートタイマーの女たちが、洗って元の場所に戻しておいてくれる。もちろん俺も同じ時間の出勤だから、その女たちがブツブツと文句を言いながら水を流すことを知っている。しかし、俺のプライドにかけて、俺は灰皿を洗うわけにはいかない。勝手に設定した戦いは、今のところは引き分けだ。