飴、食べますか。

俺が食べると知っていて、毎日彼女はそう聞いてくる。

うん、ありがとう。

俺はそのたび、その言葉を繰り返す。

彼女は、何かを望んでいるのだろうか。それで、飴を配るのだろうか。
 
灰皿に煙草を押し付け、苦い口に飴を放り込む。どこか懐かしい、みかんの味。

机に置いた資料に目を落とし、溜息を吐く。赤ペンで所々チェックを入れ、覚えなければならないところは既に覚えた。自分で判っている。俺には、それを現場で活用する力が無いのだ。