瞬ちゃんと付き合ったのは、私が高校に入学した年の夏で、2つ上の瞬ちゃんは同じ高校の3年生だった。

付き合おうと言ったのは瞬ちゃんだったけど、私はずっと前から瞬ちゃんが好きだった。

それなのに、ちょっとしたことで簡単に別れてしまった。



きっかけは些細なケンカだった。

高校3年生の最後の夏休み、付き合って2年になるからどこか遊びに行く予定だったのに、県外の大学に行っていた瞬ちゃんが実習かなにかで帰って来られなくなった。



せっかくの夏休みで記念日もあるのに、会えないのが辛かった。電話越しで何度も謝る瞬ちゃんについ感情的になって口を滑らせてしまった。

別れようと言ってしまったとき、空気が変わったのを感じた。

それまでどうにかして私の気をなだめようとしていた瞬ちゃんが、小さく「わかった」とだけ言った。

体全体がだんだんと冷えていくようだった。
それでも、冗談だと言えなかった。
「冗談」でそんな最低な嘘をつくふざけた女にはなりたくなかった。