「瞬ちゃんは?もうこっちにずっと住むの?」

「え?まさか、兄さん達がいるのに」

「車の中、ダンボールいっぱいあったから引っ越して来たのかと思って」

「あぁ、引っ越すっていうのはそうだな。
まだ全然住む場所決めてないけど」

「仕事は辞めちゃったの?」

「してるよ」



くすくす笑いながら空になった缶を捨てに瞬ちゃんが立ち上がった。



「あ、香穂、」



ガコンと冷蔵庫の扉を開けてまた缶ビールと、今度はベリーの甘いチューハイを持って来た。



「部屋、余ってるなら俺に貸してくれない?」



言われた言葉が衝撃的で、差し出されたチューハイをそのまま受け取ってしまった。



「え、瞬ちゃん、仕事は?」

「ネットさえ繋がってればどこでもできるから大丈夫」



言葉に詰まる私に「家賃、全額負担するよ?」と瞬ちゃんが笑った。



「え、えー……うち12万くらいするよ?」

「うん。あ、光熱費も出すか?」

「いやいや、私、前の旦那と生活リズム合わなくて離婚したってさっき言ったよね?
瞬ちゃんも嫌になると思うけど」

「べつにご飯作ってくれとか掃除してくれとか言ってないし、そこはもう各々やればいいんじゃない」

「え、ヒモ?あ、違うか……」



何が目的なんだろう。
家賃を負担してくれて家事も自分の分だけでよくて、瞬ちゃんにメリットないんじゃ……。



「ルームシェアさせてよ、お願いします」


目的がいまいち見えないまま困惑していると、瞬ちゃんが頭を下げた。