好きだから、欲張りになっていく。

それと同時に、隠れていた不安も出てくる。

彼には、私のような女が他にいるから泊まることもなく帰って行くのだとか、私のことは遊びで、他に本命がいるとか、考えたくもない事が溢れてくる。

「ばーか」

誰に『ばーか』と言ったかわからない呟きとともに、膝を抱えて丸くなり、コテっと横に倒れると、そらくんが、腕の隙間に入り頬を舐めている。

どうやら、私は、泣いていたようだ。

それさえもわからないほど、私の心は壊れかけているらしい…

もう、無理かも…

私は、そのまま強く目を閉じて眠った。

それから、数週間、私は彼を待つのをやめて遊び歩いた。

もちろん、【S】にも行ってない。

遊びから帰ると、玄関ドアに彼が来ていた気配が残されている日が何回かあった。

ドアノブに引っ掛けてあるコンビニ袋や、どこか出張でのお土産らしいお菓子が入った紙袋に、嬉しいと思うし、会えなかったことを残念に思う自分がいる。

自ら、会わないように避けてるというのに…おかしなものだ。

どんなに友達と馬鹿騒ぎしても、心に溜まったモヤモヤ感は晴れないし、馬鹿な事をしていると思うのに、彼を待つ生活が耐えられないのだ。