恋愛経験値も低く、恋の駆け引きの仕方もわからないのだから、『彼に翻弄されていろ』と言われて、なんと言い返せばいいのかわからない。

「…どこ行くの?」

そう言うだけが精一杯だった。

「あー、そうだな…今時のデートスポットってどこだ?」

「計画なしなの?高橋さんなら、色々な場所知ってるでしょ?」

そう、彼なら詳しいだろうと思い、私は彼任せにするつもりでいた。

「こんな真昼間からデートなんて、学生の時以来だなぁ」

あっ、そうですか…

「どこか行きたいとこないのか?」

「そう言われても…思いつくのは水族館とか遊園地、あっ、Uワールドに行きたい」

「去年オープンしたばかりの近未来都市ってとこか?」

「うん、今日じゃなくていいの…いつか行けたらでいい」

「今から行けない事もないが…問題はそらだよな⁈よし、一度帰るぞ」

「えっ、帰るの?」

彼が運転する車は、今来た道をUターンしてマンションに戻って来た。

「そらを連れて来いよ」

彼に言われるまま、そらくんを迎えに戻って帰ってくると、彼は電話中だった。

目線だけで、ゲージの中のそらくんを後部座席に置くように合図され、万が一を考えてゲージをシートベルトで固定する。