彼の余裕ある態度が、癪に触り、
「その顔ムカつく」
「はぁっ?なんだそれ?」
と、彼は楽しそうに笑うのだ。
複雑な気持ちのまま彼との初めてのデートに、私はドキドキして、彼の仕草、表情に翻弄されているのに…
「ほんと、ムカつく」
こんなに好きでも…
体を重ねても…
彼の表情や、態度からは、心の内がわからない。
こうして手を繋いでいても…
かわいいと言われても…
甘い思わせぶりな言葉を何度も言われても…
勘違いするほど、バカじゃない。
肝心の言葉を避けているって事ぐらい気づいてる。
好きだとか
愛してるとか
付き合おうとか
言わないのは、勘違いさせない為にだろう。
彼の周りにいる女性達のうちの1人になっただけで、妹的な存在から1人の女に昇格したに過ぎない。
結局、そう言う事なのだ。
勘違いするな…と、自分に言い聞かせる。
「ムカつくって言われてもな…お前の真っ赤になる初々しい感じが、他と違って…彼女ヅラしないとこや、甘え下手な千花を見てると甘やかしたくなる。俺にもこんな一面があるなんて気がつかなかった。だからムカつくって言われてもやめる気はないから、俺に翻弄されて、そのままいっぱいいっぱいになってろ」