そらくんにも、高橋さんにも憤慨し面白くない。

それでも、カチャンと餌皿を鳴らすそらくんにご飯を用意するのだから、『私って健気』と自分を慰めてしまう。

「出て行った男なんかの為に、そんな顔するな」

今だに勘違いしている高橋さんの驚く表情を見たかった事を思い出し、ニヤリとした。

「そらくん、ご飯だよ」

そらくんの横で腰を下ろしてご飯を盛ると、待ってましたとばかりご飯を食べるそらくんの名を再び呼んだ。

「そらくん、美味しい?」

「…まさか、そらくんって…そいつなのか?」

「そうだよ。私の彼氏でーす」

私の横でガクンと腰を落とし胡座をかいて頭を垂れ、頭を抱えている高橋さん。

「まじかよ…ネコだったのか。恥ずかし過ぎて死ねるレベルだぞ。猫だって早く言えよ」

「何度も言おうとしたのに、聞こうとしなかったのは誰⁈」

「言う機会はあっただろ?」

「勝手に勘違いしてたのはそっちでしょ…」

いらだったように、あーと頭をかいてこちらを見る高橋さんと目があって、つい、ふふふと笑みをこぼした私を見た彼に睨まれる。

突然、彼に肩を抱き寄せられてドキッとする。

「生意気な口は塞いでやる」

そう言うなり、唇に柔らかな感触が触れていた。