そらくんは、俄然威嚇中。

そんなそらくんを気に留める様子もなく、高橋さんはしゃがんで、そらくんに向かって手のひらを見せ、無害だと意思表示をする。

恐る恐るそらくんは高橋さんに近寄り、鼻先で臭いを嗅いだあと、警戒を解いた。

うそ…

なぜだか、彼に甘える仕草をしだしたそらくんを見て、つい、高橋さんに嫉妬してしまった。

「お前、可愛いな…千花がネコを飼ってたなんてな」

お腹を見せ、触れと彼の前で転がる姿に不満で叫ばずにいられない。

「なんで?」

「大きな声出すなって言いながら、お前が出してどうするんだ?まぁ、彼氏は出かけてるらしいからいいのか⁈」

満足したらしいそらくんは、いつものように餌皿の前に向かって歩き出した。

「そらくん…ひどいよ。私がいるのに!(なんで、私にお腹見せてくれないのに高橋さんに甘えてるの?)」

後半部分は心の底で嘆き、高橋さんの事も忘れ、いつもの癖で、そらくんのご飯を用意しにキッチンまで行くと、

「出て行ったのか?」

嬉しそうな声が背後から聞こえてきたが、言葉の意味を理解するより先に、妙にテンションの高い高橋さんにいらだった。

初対面なのに、飼い主の私より懐くなんて…