「あの…高橋さん、家に来てください」

「はぁっ?彼氏がいるのにいいのか?」

今度は彼が動揺して、私とマンションを交互に見た後、前髪をかきあげ空を見上げた。

大きくふーと息を吐き、何か決意したように私を見つめる。

「俺がどんな男か確かめてやる」

鼻息荒い高橋さんが可笑しく、そらくんが猫だと知った時の驚く表情を想像したら面白くて、笑いをこらえるのに必死になった。

私って性格悪いかしら⁈

いいじゃない…人の気も知らないで、昔の彼女を重ねて見てるんだから、ちょっとした仕返しよ。

心の中で自問自答して、彼と一緒に部屋の前まで来てしまった。

「ドアを開けたらすぐに入って、大きな声を出さないでくださいね。逃げちゃうといけないので…」

「なんて器の小さい奴なんだ」

ボソッと呟いた高橋さんの声は一旦無視して、唇に人差し指を立て、シーと唇を動かして鍵を開けドアを開いた。

暗い玄関先に見える2つの光る目は、いつもの光景なのだが、彼は気がついていない。

手招きして、早く入るよう合図を送ると中でそらくんが見知らぬ人間に驚き、シャーと威嚇しだしたので、
慌てて高橋さんの腕を引っ張って中に入れて、ドアを閉めてから玄関の明かりをつけた。