「♪あなたは気づく 2人は歩く暗い道でも 日々照らす月 握りしめた手離すことなく 思いは強く永遠を誓う♪」

急に、私の手を握り、恋人繋ぎをして先を歩く高橋さんに、アワアワして、ただ繋がれた手を見つめるしかなかった。

そして、また鼻歌に変わり、私の脳裏に歌詞が浮かび声に出さず口ずさむ事で、ドキドキする気持ちを誤魔化している。

「…そこの十字路を右に曲がるの」

高橋さんは鼻歌を歌いながら頷いて、角を曲がる。

手を繋がれているので、つられてそのまま曲がると、赤い月が正面に見えた。

「うわぁ、綺麗…初めて見た」

「年に一回しか見れないらしいぞ。お前と一緒に見れて良かった」

突然の意味深な眼差しとセリフに耐えられない。

今日は一体どうしたの?

最後のセリフは私の思考がおかしくなって空耳が聞こえたんだと思う事にした。

「一回きりしかないなんて、特別な月なんだね」

「あぁ、、特別な月らしいぞ。海外でストロベリームーン、ローズムーンって呼んで願い事をするらしい」

「へー、そうなんだ」

「女は、そう言うの好きだろ…会社の女子が恋愛成就のおまじないをすると騒いでたぞ。好きな相手と一緒に見ると効果的だってな」